六度万行:布施(和顔愛語) -お釈迦さまの説かれた幸せになれる6つの道-
仏教を説かれたお釈迦さまは、私たちが幸せな人生を歩む6つの道(善)を教えられています。
それを六度万行(ろくどまんぎょう)といわれます。
この6つの善いことのうち、どれか一つでも徹底して実行すれば幸せになれる、と説かれているのです。
六度万行の一番目に挙げられているのが『布施』です。
布施と聞くと、坊さんに渡すお金のことを連想し、あまりいいイメージが湧かないかもしれません。それが布施なら、正直、なるべくしたくないものですよね。
しかし、布施の本来の意味はお金を与えることばかりではありません。笑顔で接したり、優しい言葉をかけたりすることも立派な布施であり、相手を幸せにするために大いに実行すべきものなのです。
今回はその布施について解説します。
ダンナさんとは、施すの人のこと
その布施行の一つに『和言愛語(わげんあいご)』があります。
和言愛語とは、
和やかな笑顔【和顔】と
優しい言葉【愛語】とを施すことです。
施す人のことを、昔のインドの言葉では「ダーナ」といわれます。お釈迦様はインドの方ですから、昔のインドの言葉はよくお経の中に出てくるのですね。
中国では漢字を当てて「檀那(ダンナ)」と書き、「布施をする人」の意味です。
「うちのダンナは休日に寝てばっかりで-」妻が夫のことを指して言ったり、
「およびでございますか、ダンナさま」執事が、社長に言うこともある。
「だんな、安くしておきますぜ!」店の人がお客さんのことを呼ぶ時にも使われる。
そういえば、お父さんは家族の生活を支え、執事は社長の給料で生活し、店の人は客からお金をもらっていますね。
英語では「ダーナ」が転じて、臓器提供者をドナーといい、寄付をドネーションという。
元手がなくてもできる布施 -無財の七施-
布施する人は、それなりの経済力がないとできないかというと、お釈迦さまはそうは言われていません。金も財産も名誉も地位もない人でも、布施をしようという心さえあれば、七つの施しができますよ、と説かれています。
「雑宝蔵経」に説かれている有名な『無財の七施(むざいのななせ)』という教えです。
その七つの中に
『和顔悦色施(わげんえっしょくせ)』と『言辞施(ごんじせ)』があります。
『和顔悦色施』とは笑顔を施すということです。
なるほど、笑顔は元手も要らない、「スマイル0円」という言葉もありました。
人を喜ばせるには多少とも元手のいるのが世の中の常です。
けれども、ほほ笑みは、ちょっと目元の筋肉を動かすだけで多くの人に幸せを与える事ができるのですから、すばらしい布施行だと説かれています。
「言辞施」は言葉を施すことです。
暗い表情を浮かべて悩みを抱えている人に「大丈夫?」と優しい言葉をかけることですね。
私たちは周りに自分のことをかまってほしい、自分に優しい言葉をかけてほしいとばかり思ってしまいます。でも、私以上に苦しい思いをしている人はほかにたくさんいます。その人たちを心配し、自分から気遣いの言葉をかけていってこそ、相手も喜ばれ、自分も元気をもらえるのです。
“笑顔と挨拶を出し惜しむものほどのどケチはない”と言われます。
相手も喜ばれ、自分も幸せになる笑顔と挨拶を大いに実行していき、幸せな人生を送りましょう。